出産後に膝の痛みと尿もれの両方で悩まれている方に多く見られるフラットバックという姿勢傾向について
こんにんちは、ボデイケア整体荻窪ラボの三橋です。
当院の産後の骨盤矯正コースには、様々な不調やトラブルを抱えて来院される産後まもないクライアントさんたちが大勢いらっしゃっています。
そんな中で大変興味深いのが“膝の痛み”と“尿もれ”という二つの症状をともに抱えてしまっているケースの方がとても多く見受けられるという点。そして、この二つの症状を併せ持つ方々の多くにに共通しているのが、フラットバック(平背)とよばれる姿勢的傾向を持つこと。
今回、これら症状に潜む共通する原因と、さらにはフラットバックからの根本的な改善を「体幹」から読み解いていこうと思います。
フラットバック(Flat Back)とよばれる姿勢的傾向とは
フラットバック(Flat Back)とは医学用語であり、平背(へいはい)と呼ばれる、真横から見ると背中から腰にかけて脊柱(背骨)がまっすぐに見える姿勢的傾向を指す言葉。
普段から骨盤を後ろに寝かせて(骨盤を後傾させて)椅子などに座る習慣のある方が陥りやすい姿勢です。(※この姿勢を腰猫背ともいう。)
通常、脊柱(背骨)は生理的湾曲(せいりてきわんきょく)といって、緩やかなS字のカーブを描いているのが理想とされ、これは人間が直立歩行するにあたって本来必要不可欠なもの。
そして、この生理的湾曲に乏しいケースをフラットバックと言います。
また逆に、この生理的湾曲が過剰である場合を“反り腰”と呼ぶことがあります。
ちなみにフラットバックの傾向があると、歩行時において背骨で地面からの衝撃を上手く逃がせなくなるため、首や腰をたいへん痛めやすくなってしまうといった特徴を持つのです。
フラットバックの方に多くにみられる特徴について
今度は、フラットバックの姿勢的傾向をもつ方々に多く見られる特徴について説明します。
女性の場合、フラットバックの方は基本的に筋肉量の少ない細身の方であることが多いのですが、特に大腰筋(だいようきん)と呼ばれる筋肉の筋力が弱い点という点がまず挙げられるでしょう。
大腰筋という筋肉はインナーマッスルでありながら、上半身と下半身とを繋ぐ長大な筋肉であり、上図イラストのように腰椎(背骨の腰の部分)をお腹側に引き出す(これを“腰椎の前弯”という)ことで、構造的に背骨のS字のカーブを作る働きを担っています。
そして、“腰椎の前弯”を作り出すことで、骨盤が前傾して正しいポジション※に入れることが出来るのです。
(※背骨に対して骨盤が30度前傾するのが理想的なポジションであるといわれている。)
つまりは、大腰筋は「骨盤の位置決め」に関わる、とても重要な筋肉であるということ。
ところが、大腰筋が筋力低下を起こしてしまっていると背骨のS字のカーブが上手く作れないことで“腰椎の前弯”を成立させることが出来ず、骨盤が本来の位置よりも後傾してしまいます。
これがストレートバックを作ってしまう原因となるのです。
そして、フラットバックの傾向を持つ方は骨盤のポジションの関係でお尻の筋肉に上手く力を入れられなくなり、お尻が垂れて貧相になってしまう方が多いというのも特徴。
そういったこともあって、特にフラットバックの姿勢的傾向を持つ方は、普段からお尻の筋肉を使わないで膝から下だけでトコトコ歩くような方が多いのです。
またフラットバックの傾向にある方は、骨盤に直接つながっている内転筋群(ないてんきんぐん)と呼ばれる内ももを支える筋肉や、ハムストリングと呼ばれる太もも裏を支える筋肉に大きなストレスを掛けてしまう状況をも作ってしまいます。
だから育児において日常の何でもない動作を繰り返しただけで、これら内転筋群やハムストリングスに過剰な負担を掛けてしまうこととなり、膝関節に痛みや違和感を抱えてしまうことになるという訳です。
フラットバックを「体幹」という視点から考えてみると
今度は、フラットバックを「体幹」という視点から考察してみたいと思います。
要は、普段の姿勢や身体の使い方の癖(くせ)などといった「何らかの原因」によって大腰筋の機能低下を招いてしまった結果、フラットバックという姿勢的傾向を抱えてしまったという訳です。
そうなると先に述べた通り、内転筋群の機能低下を呼び起こしてしまうことになります。
すると、ここで大きな問題が生じてしまうことに。
これら大腰筋と内転筋群という二つの筋肉が機能低下を起こしてしまうと、実は「体幹」の力を上手く利用出来なくなってしまうのです。
その理由は、インナーユニットと呼ばれる、人体の腹部の最も深い部分に存在するエンジンとも言うべき中枢部分と、大腰筋、内転筋群は直接連結していることで、インナーユニットの生み出す力(腹圧)を下半身へと渡す役割を実は負っているから。
分かり易く車で例えるならば、エンジン部分(インナーユニット)が生み出した「動力」をタイヤ(手足)に効率よく繋げられない状況をつくってしまうということ。
つまりは、大腰筋と内転筋群は互いに協調しながら「体幹」が生み出す力を利用することで、下半身の筋肉を効率よく使う役割を実は担っているのです。
これがフラットバックの傾向にある方は成立しないのです。
すなわちフラットバックの姿勢的傾向のある方は、一般的に「体幹」が弱いということ意味するのです。
これは逆の傾向にあるとも言える反り腰の方々よりも「体幹」の弱さは顕著になるようです。
インナーユニットを支える骨盤底筋群について
続いて今度は、インナーユニットそのものについて焦点を当ててみましょう。
インナーユニットを構成する筋肉の一部であり、骨盤を底から下支えしている骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)と呼ばれる筋肉をご存知でしょうか?
「出産したらコツバンテーキンを引き締めましょう」というアレです。
近頃は、出産後に「尿もれ対策」として、医療機関から骨盤底筋群を引き締める体操を教わることが一般的となってきているようです。
しかし、ここでひとつだけ注意が必要。
残念ながら骨盤底筋群だけ引き締めるトレーニングをしたところで、“尿もれ”にはあまり効果が期待出来ないのです。
これは骨盤底筋群をはじめとするインナーマッスル全般に言えることなのですが、関連する複数の筋肉と“協調して”使う訓練をして初めて効果が期待できるからで、それ単体で鍛えたところであまり意味がないのです。
つまり骨盤底筋群というよりは、あくまでインナーユニットごと、きちんと機能できるように訓練しなければ意味がないということ。
特に尿もれ対策としては、骨盤底筋群と内転筋群とを協調して使えるように訓練することが改善へのカギとなる訳です。
体幹を回復させることで尿もれと膝痛からの根本的解決をめざす
フラットバックという姿勢的傾向のある方は、ある意味「体幹」が弱い状態にあると言えるかと思います。
その理由は、特に「体幹」を支える重要なコアマッスルである大腰筋や内転筋群といった筋肉の出力が低下してしまう状態に置かれてしまっているからです。
そして、これら筋肉に余計な負荷が掛かる状況を放置してしまうことで、“膝の痛み”や“尿もれ”といったトラブルをも誘発してしまいやすくなるという訳です。
それではフラバック、ひいては出産後に抱えてしまった“膝の痛み”や“尿もれ”から根本的解決を図るには、どうしたら良いのでしょうか?
おそらくは、そういった傾向をもつ方々は、そもそも妊娠前から“独特の身のこなし”をする生活習慣があったことが推測されます。
足だけで歩く(膝から下だけでトコトコ歩く)、歩幅の狭い歩き方。言い換えると「体幹」を使えていない歩き方がそれです。
そこでお薦めしたいのが、実は自転車。それも電動のママチャリ。
普段、漠然と歩くだけではなかなか意識的に使えない内転筋群や大腰筋といった筋肉を効率よく使う訓練に自転車は打ってつけであるのです。
スマートにペダルを漕ぐという動作に、実は「関連する複数の筋肉と“協調して”使う」という動作が凝縮されているのです。
また、さほど強度の高い運動ではないので、産後のリハビリテーションとして打ってつけであることは言うまでもありません。
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