自転車こそが産後女性の尿もれと膝の痛みを劇的に改善させてしまう最強のツールである理由
こんにちは、ボデイケア整体荻窪ラボの三橋です。
出産されてから、“膝の痛み”と“尿もれ”を抱えてしまうようになってしまったという相談を産後ケアの現場では頻繁にお聞きします。
そして、肩こり腰痛と比べて、これら二つのトラブルはまさに典型的な「出産後に特有のトラブル」と言っても過言ではないでしょう。ほとんどの方がおよそ妊娠前には経験したことのない症状だからです。
ところで。
実は、この“膝の痛み”と“尿もれ”を劇的に改善させてしまうツールが存在していたのです。
それは、自転車。普通のママチャリで良いのです。
今回ブログは、その理由について。
出産するとなぜ膝痛や尿漏れを抱えてしまいやすくなるのか?
出産後に抱えてしまう“膝の痛み”と“尿もれ”。
これらには割と共通するファクターが存在するものと当院では考えます。
なお、これらについてはまず簡単に結論から言ってしまうと、大腰筋(だいようきん)や内転筋群(ないてんきんぐん)といった“体幹”を支えるインナーマッスルの機能低下にその原因があると考えるのです。
特に尿もれについては、直接排尿をコントロールしている骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)が隣接する内転筋群と機能的に深い関係にあることで、内転筋群に障害が生じてしまうと尿もれを引き起こしてしまうのです。
簡単に言ってしまうと、内転筋群が機能低下したことで上手く骨盤底筋群に力が入らなくなってしまう状況を作ってしまったということ。
これは「他の筋肉と連携して働くことで、はじめてその機能を発揮できる」というインナーマッスルの特性が顕著に現れたケースであるとも言えるでしょう。
一方、膝痛に関しては、内転筋群そのものに痛みを誘発するトリガーが存在します。
これ以上の詳細についてはここでは割愛しますが、内転筋群が障害されることで、膝の曲げ伸ばしに関わる筋肉が硬直してしまうことで“膝の痛み”が起こります。硬い筋肉を無理に伸ばそうとする瞬間に痛みが走るという訳です。
そして、さらには大腰筋と内転筋群という2つの筋肉にも、股関節付近でこれら筋肉どうしが連結している関係で、実は機能的にとても深い関係にあったのです。ここが「共通するファクターがある」という所以になります。
妊娠出産の過程で女性の身体に起こる変化とは?
そもそも、なぜ妊婦さんや産後女性の身体に“膝の痛み”や“尿もれ”が出現してしまいやすいのでしょう?
その答えは、妊娠中に抱えた胎児の成長にあります。
まず、お腹の成長とともに、胎児を重さを支え続ける骨盤底筋群が徐々に柔軟性を失っていきます。
そして硬くなった骨盤底筋群は、やがて隣接する内転筋群との連携を失ってしまうことになるのです。
次にお腹の成長とともに変化していく重心バランスの問題。
妊娠後期ともなると、お腹でバランスをとって立ったり歩いたりするようになります。これについては、妊婦さん独特の立ち方、歩き方を想像してもらえたら分かり易いでしょう。
もうそうした変化が目に見えるようになった頃には、内転筋群や大腰筋といった筋肉にはずいぶんとストレスが掛かり、ずいぶんと機能低下を起こしている状態にあるはずなのです。
つまりは、そういった“上手く力が入らない”状態にある筋肉を無理に使ってしまうことで、膝痛や尿もれを誘発してしまうことになってしまう訳なのです。
そして、今度は出産後。
こうして妊娠中に10か月かけて変化していった重心バランスが、今度は出産を機に一気に根底から覆されてしまうことになるのです。
多くの方は、このタイミングで産後女性に特有の不調やトラブルを抱えてしまうことに。
なお当院では、この現象を「出産による体幹バランスの崩れ」と呼んでいます。一時的に全身の筋肉の機能に混乱が生じてしまう訳なのです。
産後女性が効率的に尿漏れや膝痛から回復を目指すにあたって最適である自転車
それでは産後女性が抱えてしまった“膝の痛み”や“尿もれ”から効率よく回復を目指すには、どういった努力をするべきなのでしょう?
ここで重要となってくるのがインナーマッスルの特性を理解するということ。
「他の筋肉と連携して働くことで、はじめてその機能を発揮できる」というインナーマッスルの特性を正しく理解した上で、典型的なインナーマッスルである大腰筋や内転筋群、さらには骨盤底筋群の機能回復を図っていくべきであるのです。
そもそも、こういったインナーマッスルと呼ばれる筋肉はさほど大きな出力をもつ筋肉ではありません。
だから「鍛える」というよりは、あくまで「機能回復させる」といったイメージで充分。ふたたび「正しく協調して」使えるように訓練することが重要で、逆に個々の筋肉を個別に筋肥大させるようなトレーニングやエクササイズはほとんど無意味ということになります。
しかしながら、特に難しいのが骨盤底筋群となるでしょう。
人体の最も奥深い部分を支えるインナーユニットと呼ばれる筋肉の集合体の一部である骨盤底筋群。
インナーユニットとは、上図イラストの通り横隔膜、多裂筋、腹横筋、そして骨盤底筋群という4つ筋肉で構成され、おもに腹圧に大きく関与している筋肉群です。
当然、骨盤底筋群に関してはそれ単体ではなく、あくまでインナーユニット全体としての機能回復を図るべきで、当院ではまずドローインとよばれるエクササイズを産後女性の皆さまには処方します。
そして、インナーユニット(骨盤底筋群)がある程度回復して、なお尿もれや膝痛が残っている場合、さらに大腰筋や内転筋群との連携を回復させるトレーニングに取り組んでいただくことになるのですが、そこで打ってつけのツールが自転車ということになるのです。
こういった日常、ただでさえ特に意識して使うことのない大腰筋や内転筋群をさらには骨盤底筋群まで絡めて(協調させて)使うにあたって、格好のツールが自転車で、当たり前の話になりますが「左右に倒してしまわないように、なおかつ効率よくペダルを漕ぐ」という動作がこういった機能訓練に打ってつけであるのです。
似たようなツールでバランスボールがあるのですが、それよりも“やらなくてはならない動作”があるのが自転車。
自転車は実は、なかなかふつうの日常生活で使いきれないような筋肉を効率よく鍛えることを叶えてくれる、しかも、さほど負荷も掛からない理想的なツールであったのです。
そういった意味では、出産後のリハビリテーションとしては最適なツールであると当院では考えるのです。