出産後に風船を膨らませなくなってしまうことから見えてくる産後ケアの本質について
こんにちは、ボディケア整体荻窪ラボの三橋です。
ある時、産後の骨盤矯正コースに通われていたクライアントさんが、こんなことを仰ったのです。
「そういえば、出産してから風船を膨らませなくなっていることに気付いたんですけど。これって妊娠出産と何か関係があるのでしょうか?」
結論から言ってしまうと、大いに関係があります。
妊娠出産によって女性の身体のなかで起こる「ある決定的な変化」。これを最も身近で感じさせるエピソードであるとすら考えるのです。果たして周産期の女性の身体にはどんな変化が起きているのか?まさに産後ケアの本質を突くエピソードとも言えるのです。
骨盤底筋がダメージを受けることで起こるインナーユニットの機能低下
ところで、いきなり話が変わってしまうのですが、出産後に起こるマイナートラブルとして代表的な物のひとつに「尿もれ」がまず挙げられるかと思います。
そして、この「尿もれ」を改善させるにあたって、まず施術者側は「妊娠出産によって実際に女性の身体に起こっている変化」について正しく理解していないと、なかなか良い結果は導けないものです。
どういうことかと言いますと…。
「尿もれ」の改善にあたっては、妊娠出産によってダメージを受けてしまった骨盤底筋(こつばんていきん)の機能の機能回復を図っていくことは、今では良く知られた話。だから一般的な整体カイロプラクティックでも骨盤底筋を鍛えるような体操を処方することがほとんどで、これは医療機関でも然り。ケーゲル体操や産褥体操などがこれに当たります。
しかし、どうしても結果が伴わないことが多いもの。いったいどうしてなのでしょう?
それは骨盤底筋を「単体で」どうにかしようと考えてしまっているから。
骨盤底筋を機能回復させるにあたっては、まずは骨盤底筋と機能的に密接な関係にあるインナーユニットと呼ばれる、“筋肉の集合体”としての機能回復から目指すべき。鍛える前にまず「骨盤底筋と他の筋肉をきちんと協調させて使えるように」訓練、再教育させるべきあるのです。(※インナーユニットとは骨盤底筋をはじめとする4つの筋肉の集合体のこと、上図イラスト参照)
つまり「尿もれ」してしまうのは、尿を止める役割を持つ骨盤底筋を隣接する他の筋肉と正しく協調させて使えていないからなのであり、そこでいきなり骨盤底筋を単体で鍛えようとしたところであまり意味がないのです。
妊娠出産で風船が膨らませなくなってしまう理由とは
ここで「妊娠出産で風船が膨らませなくなってしまう理由」についての話に戻ります。
これについては、ひと言で言ってしまうと腹圧を上げることが出来なくなってしまったからに尽きます。
先述したインナーユニットを“集合体として”正しく収縮させることが出来なくなってしまったことにより、腹圧を上げることがままならなくなってしまっているのです。
特に妊娠中は胎児の重さを支える骨盤底筋にストレスが掛かりるだけでなく、大きく膨らんでいくお腹によって腹横筋とよばれる筋肉にもストレスが掛かります。こういった事情により、出産後まもない女性はインナーユニットを構成する、これらふたつの筋肉が機能低下を起こしてしまっていることで、腹圧を上げて「強く息を吐く」といった動作に支障をきたしてしまうことになるのです。
ですので、こちらも単体で骨盤底筋や腹横筋といった筋肉にアプローチするのではなく、インナーユニットとして、さらには隣接する周囲の筋肉と正しく協調して使えるように“機能訓練”するべきなのであります。
妊娠出産で生じてしまう「ある決定的な変化」にアプローチしてこそ
多くの場合、妊娠から出産までの過程で女性の身体のなかに「ある決定的な変化」が起こることで、骨盤底筋や腹横筋といった筋肉に著しい機能低下が生じ、インナーユニットとしての機能が損なわれ、さまざまな不調やトラブルの呼び水となってしまいます。
それは「尿もれ」といった機能障害であったり、腰痛であったり、「お腹のたるみ」や「ぽっこりお腹」といったボディラインの崩れといった形で出現することも。
また、なかには違和感といった程度のレベルで抱え込んでしまっていることもあるのですが、なかには「風船を膨らませなくなってしまっている」ことで、ようやく妊娠出産で自身の身体に起きている「ある決定的な変化」に気付かれることもあるのです。
もちろん、こういった「ある決定的な変化」が月日の経過とともに自然に回復してしまうこともあります。しかし、逆に忘れた頃に思わぬ形で不調やトラブルが顕在化してしまうなんてことも。たとえ違和感レベルの不調であっても、長い年月をかけて身体にダメージを与え続けてしまうこともあるのです。
そういった意味では、出産後に「風船を膨らませなくなってしまっている」というエピソードは、妊娠出産で生じる「ある決定的な変化」を理解する上でこれ以上ないケーススタディであると考える訳なのであります。